今回、私たちは EBSCO アメリカ本社の Principal User Experience Researcher である Ryan Walter にインタビューを行い、ユーザーフィードバックと開発戦略の関係性について、そして、その2つが UI の進化にどのように貢献したかについて、独自の発見を得ることができました。
そこで、今回から3回にわたり、ユーザーテストの重要性、そして EBSCO Discovery Service(以下 EDS)および EBSCOhost の UI エクスペリエンスの向上にユーザーの皆様からお寄せいただいたフィードバックが与えた影響についてご紹介したいと思います。
Q:EDS と EBSCOhost の新ユーザーインターフェイス(以下 UI)を開発する過程において、ユーザーテストおよびフィードバックが果たした役割について詳しく教えて下さい。また、どのようにしてユーザーの声が確実にプロセスに組み込まれるようにしたのでしょうか?
A: ユーザーテストは EBSCO がデザインを行う上で欠くことのできない部分です。私が EBSCO 社の User Experience (以下 UX) 調査チームの一員になって以来、学術図書館員から大学生、公共図書館の利用者、医療関係者、そして業界を牽引する研究者に至るまで、あらゆる利用者のニーズ、ゴールそして行動を詳しく調査するため膨大な調査を実施してきました。調査にはコンテキストインタビュー、ユーザビリティテスト、コンセプトテスト、カードソート、ベンチマーキング、A/B テストなど、様々な方法を使用しました。
新 UI のケースで私たちは、何年もかけ従来型の図書館インターフェイスを使用する時に学生が直面する課題を観察しました。新しい EDS と EBSCOhost(の UI)を設計するにあたり、私たちは学生のエクスペリエンスに焦点を当て、彼らがプレッシャーを感じたり、取り残されたりしないようにしたいと考えたのです。
Q:学生との会話から得られた知見や、浮かび上がった重要な課題は何でしたか? またこれらの情報は、新しい UI のデザインと機能の変更にどう影響しましたか?
A: 新 UI を設計する時、私たちは多くの学部生や大学院生に対し、彼らが学術研究、学術情報検索に求めるものについてのインタビューを行いました。この調査は現在も進行していますが、学生たちのエクスペリエンスには、初めから、学部や機関の垣根を超えた共通の主要なテーマが見られました。
まず、学生は通常、厳しい期限の下、独りで調査や研究を行います。そのほとんどは講義で出された課題に関連するもので、彼らは学期中、大量の課題を、多くの場合は同時並行で、かつ広範な主題分野でこなす必要があります。
また学生たちは週末や夕方~夜の時間を使って調査や研究を行っており、また通常、助けを求めることに消極的であるため、教員や図書館司書(職員)らと協力することはあまりありません。彼らは図書館から(情報検索の)指導や案内を受けたことがあるかもしれませんし、受けていないかもしれませんが、いずれにせよ、学生たちは求める情報リソースを自分たちの力で、迅速に見つける必要がある立場にあるのです。
第二に、課題は通常、明確な要件と許容される情報源に対する期待値を備えた、高度に構造化されたものとなっているので、当然ながら、学生の調査研究へのアプローチは高度に実践的なものになります。彼らはすぐに内容を理解して課題(レポート)に取り掛かることができる、影響力と関連性を持ち合わせた、ダウンロード可能な全文情報を探しています。
第三に、そして最も重要なことは、彼らは前述した全てを図書館のインターフェイス上で実行しようとしていることです。そしてその図書館インターフェイスは、学生が求めるスタンダードからすると時代遅れで、かつ複雑で混乱を招きやすいものです。今日の学生は、魅力的、かつ直感的なデジタル・エクスペリエンスを期待していて、最新の標準に準拠していない旧式の、かつ過度に複雑な UI を信用しません。彼らのこうした期待は、モバイルテクノロジー、アプリケーションデザイン、SNS、自然言語での検索に対応した検索エンジンなどによって、若いうちから醸成されています。これが、学生が Google Scholar や JSTOR のようなオープン Web データベースに強く惹かれる理由です。この2つは、より現代的で、理解しやすく、かつ検索エクスペリエンスがどのようなものであるべきかの学生のメンタルモデルに、より寄り添っている傾向があります。
学生が図書館の資料を探すことに消極的であることについて、私はよく、ある instructional librarian から聞いた言葉を思い出します:「本学の学生たちは、ただ物事がうまくいくことを望んでいる。彼らは Google に慣らされていて、いくつかのキーワードやフレーズ全体から、自身の求める結果が得られるものだと思っている。何かの使い方について、教えてもらう必要はないと思っている」
従って新しい UI の目指すところは、初めから、学生たちが自分自身で効果的に調査や研究を行うことができるようにすること、そして図書館が所蔵する資料の利用を促すインターフェイスを設計することでした。
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第1回の内容は、ここまでとなります。
次回は、実際に利用者から寄せられたフィードバックを通じ特定されたニーズや問題点の具体例、そして、それらが新 UI の改善にどのような形で繋がったのかについて、お届けいたします。