先々週から全3回に分けて、EBSCO Discovery Service(以下 EDS)と EBSCOhost のユーザーインターフェイス(以下 UI)の改良を行う上でのユーザーテストの重要性、そしてユーザーの皆様からお寄せ頂いたフィードバックが与えた影響について、EBSCO アメリカ本社の Principal User Experience Researcher である Ryan Walter に行ったインタビューをご紹介しています。
最終回となる今週は、新 UI の使い勝手を評価する目的で行ったベンチマーキング調査の結果について、そして新 UI の継続的な開発と実際の利用者との関りをどのように考えているかについてお届けいたします。
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Q:ユーザーからのフィードバックには、しばしば多種多様な意見が含まれます。経験豊かなユーザーに向けた高度な機能と初心者に向けたシンプルなエクスペリエンスの間でバランスを取るため、この多様な意見をどのように調整しましたか?
A:図書館員、特に指導担当の図書館員(instructional librarian)から寄せられるフィードバックは、今も昔も私たちの研究には欠かすことのできない要素です。私たちは、図書館員の皆様が情報検索の方法や情報リテラシーのスキルを教える一方、学生自らが関連性が高く信頼できるコンテンツを発見できるようにするインターフェイスの作成に取り組んでいます。
そして図書館員や経験豊富な研究者のため、検索オプション・検索履歴・シソーラス機能など、より高度な検索機能を新しい UI に実装し続けます。私たちの目標は、詳細検索を高度な検索ツールを駆使して研究を進める経験豊富なユーザーのための目的地にし、新しい世代の学者を育成して、その分野に大きく貢献することです。
Q:ユーザーのフィードバックに応じて行われた変更により、ユーザビリティ指標やユーザーの満足度に目に見える改善が見られましたか? 特に目立った成果があれば教えて下さい。
A:製品が市場において成功したかを測る主な方法の1つに、ユーザビリティのベンチマークがあります。EBSCO 社の user research 部門は、世界中の学生・教員・図書館員を対象に 新しい EDS のユーザビリティベンチマーク(の測定)を定期的に実施しています。 参加者は一通りの、一般的な情報検索を行い、完了の容易さを評価するように求められます。回答はシステムユーザビリティスケール (SUS)に則って計算され、0~100の間で総合的なユーザービリティのスコアが提供されます。ユーザビリティの基準値は68です。
新しい UI を公開して以来、私たちが実施した 7 回のベンチマーク調査では、学生の平均 SUS は92、教員と図書館員の平均 SUS は84 をマークしました。2023年7月に実施されたベンチマーク調査では、学生の SUS は97と、非常に高いことが分かっています。また、全体的な使いやすさ、利用に対する信頼性、使いやすさについても学生間で高いスコアが得られました。これは私と、私のチームにとって心強い結果でした。なぜなら、前述したように、生徒の利用率と信頼を高めることが新しい UI を設計する上での主な目標の 1 つだったからです。
学生が一貫して「使いやすい」として挙げた要素は、クイックフィルタ、引用と保存の容易さ、検索のシンプルさ、結果リストに表示される検索語のハイライト、全体のシンプルかつモダンな美しさなどが挙げられます。
Q:UI の継続的な改善にどのように利用者を関わらせていくのですか? 利用者が自身の経験や提案を共有するよう促す仕組みは整備されていますか?
A:私たちは常に学生、教員、図書館員の皆様と共に新しい UI について議論し、新機能や改善点に関する重要なフィードバックを得るための調査を実施しています。過去、私たちはフィルタを頻繁に使用する利用者のワークフローを改善するため、フィルタの使い勝手に関する詳細な調査を実施しました。そしてその結果が、フィルタパネルの一連の使いやすさの改善につながりました。これは、フィルタパネル内の導線を分かりやすくすること、利用可能なフィルタの選択をより見やすく、より見つけやすくすること、詳細検索時に検索結果を絞り込む際、絞り込み条件(フィルタ)選択を保持するための固定フィルタ(sticky filter)を導入することに重きを置いています。
Q:あなたの目から見て、ユーザーテストとフィードバックの統合を通じ、新しい UI の開発プロセスはどのように強化されたと考えていますか? また、これらのツールを形成する上での利用者や組織・機関の役割について、どのようなメッセージを伝えたいですか?
A:ユーザーテストにより、私たちは市場のみを見据えた開発モデルから、あらゆる利用者の需要と期待の変化に関心を寄せる開発モデルへと移行しました。それにより、これまで存在を知らなかった問題の解決に力を注ぎ、図書館利用者に対する認識をより多様な行動や態度が含む形に広げることができました。利用者ベースの多様なニーズのバランスをとることは、必ずしも簡単なことではありません。それでも、挑戦する価値はあります。新しい UI に加えた変更により、学生の利用が増え、図書館リソースに対する新たな熱意が呼び起こされると思っています。
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EBSCO Discovery Service ならびに EBSCOhost の新しい UI 開発は、ユーザー中心設計(UCD)の代表的な例です。広範囲にわたるユーザーテストとフィードバックを通じて、ユーザーベースの多様なニーズと行動に関しての知見が得られ、結果、優先順位の高いフィルタや合理化された検索オプションといった、実用的な改善が実現しました。EDS のシステムユーザビリティスケール (SUS) の平均スコアが、学生間で 92、教員間で 84 という素晴らしい結果は、変更に対するプラスの影響を強調しています。
継続的なユーザーエンゲージメントは引き続き EBSCO における改善作業の軸となり、新しい UI は、進化する利用者の皆様の期待に確実に応えます。利用者と開発者の協力によって、利用者から寄せられたフィードバックを開発のプロセスに統合することの変革力を強調し、最終的にはユーザー中心設計の有効性の証となるインターフェイスを作り上げたのです。