本年5月、EBSCO 米国本社が主催したオンラインセミナーにおいて、四名の大学図書館員が、各々の図書館においてデータ分析の収集と解釈を行う上で経験したこと・課題を紹介しました。 本稿ではその議論のハイライトを簡単にご紹介します。
進化する利用者のニーズにただちに対応し、迅速にピボットできる agile library になることは、運営上の「ゴールド・スタンダード」です。しかし、しっかりしたデータ分析が行われていないことで、図書館はユーザーエンゲージメントに関する重要なエビデンスを見逃し、目標の達成から遠ざかってしまうことがあります。バラバラのデータソース・手作業による処理・オフラインでの保存・完全な見通しの欠如により、図書館データの収集と分析はしばしば重荷に感じられます。
本年5月に行われた EBSCO 米国本社主催のオンラインセミナーでは、デンバー大学図書館長 Michael Levine-Clark 氏、ミズーリ州立大学図書館、Dean of Library Services の Thomas A. Peters 氏、レンセラー工科大学(RPI)Library Director の Andrew White 氏が、図書館におけるデータ分析について彼ら自身の経験と成功を紹介すると共に、エビデンスに基づいた洞察を提供し、図書館の価値を証明するような、図書館データを用いた確かな道筋を作るための方策について議論しました。本稿ではその議論のハイライトを簡単にご紹介します。
“So What?”
パネリストのひとり、Thomas A. Petersは、議論の序盤でこの問いを投げかけます。 これは、図書館データを分析する際の素晴らしい質問です。この質問をすることで、図書館は「データ主導型」の組織から「データ情報提供型」の組織へと変わり、ここ数年流行しているビッグデータの考え方から一歩退くことになります。この小さな変化が、努力の方向性を変え、データとデータ分析から得られた知識を使って図書館にストーリーを語らせることができるのです。
見逃してしまうことは?
データが必要になるたびに、最適なデータソースを決定し、その収集に時間を割くのは、司書や職員の役目です。課題は、データの解釈よりも収集に多くの時間を費やしてしまうことです。図書館でのデータ分析が自動化され、視覚的に表示されるようになれば、傾向(例:所蔵内での過剰支出)の把握が簡単になり、職員はデータを素早く、分かり易く解釈することができるようになります。データの分析に集中する時間が増えることで、新たな疑問や答えが生まれることもあります。
学生の成長における図書館の役割とは?
学生生活を通じた学生の自立と成長をサポートすることは、全ての学術図書館にとって責務です。さらに重要なのは、学生が躓いている分野をよりよく理解し、興味深い傾向に注目することで、それぞれの図書館がインフルエンサーとしてのポジションを示すことができるということです。 例えば、デンバー大学図書館の Michael Levine-Clark 氏は、データから EzProxy のセッション数が多い学生は成績平均値(GPA)が高い傾向にあることを発見しました。
データを保護するために何ができるか?
パネリストたちは、個人情報は各機関内に留めておく必要があると語りました。 利用している図書館分析プラットフォームにロードするデータの種類を選択できるということは、情報保護のための重要なステップです。 例えば、レンセラー工科大学のセキュリティ担当者は、IP アドレスは個人を特定できる情報であると判断し、そのデータをEBSCO の Panorama プラットフォームに統合しないことを選択しています。
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オンラインセミナー全内容(録画)は以下よりご覧頂けます。
ただし、米国本社主催のセッションとなるため、全編英語(通訳なし)となります。予めご了承下さいませ。